ソーシャル・アナリティクスのROIを測定する方法

by Robyn Lindars | 2020年2月10日| ソーシャル分析
参照元: https://www.netbase.com/blog/how-to-measure-social-analytics-roi/
本記事はNetBase Solutionsによって書かれた上記の記事を翻訳したものです。

ソーシャル・アナリティクスのROI(投資利益率)の測定は多くのブランドにとって課題となっていますが、確実にソーシャル・アナリティクスを向上・改善していくためには避けては通れません。ROIを測定してソーシャル・アナリティクスの成果を確認することは、目標を達成するために順調に進んでいるか、コースを修正する必要があるかを知るために必ず必要になります。

また、ソーシャル・アナリティクスの担当者にとって重要なのは、ソーシャル・アナリティクスへ投資する価値をどのように示せるかということです。ソーシャル・アナリティクスのように形として成果が見えないものの場合、ROI測定はソーシャル・アナリティクスがどのようにマーケティングに貢献しているかを示す手段にもなります(詳細はこちら)。

ソーシャル・アナリティクスのROIを測定して、現状や成果を見える化しましょう。ROI測定の際に検討する項目は次のとおりです。

  • 目標を定義する
  • ベースラインを設定する
  • 背景を理解する
  • ROIを拡大する
  • 途中経過を確認する
  • ROIをわかりやすく示す

それでは、それぞれのステップを見ていきましょう。

目標を定義する

ROIは、すべてのブランドが同じように測定するものではありません。ROIの測定基準はその時の状況や達成したい目標によって異なります。まずは、目標を定義して、測定する対象やその理由を明確にしましょう。たとえば、目標として以下のようなものが考えられます。

  • 売り上げを伸ばすために、ソーシャルエンゲージメントを高める
  • オンラインとオフラインでの顧客体験をレベルアップする
  • キャンペーンの効果を測定する
  • カスタマーサービスを刷新してブランドヘルスを向上させる
  • 新製品のアイデアを集める
  • ブランドの認知度を高めるためインフルエンサーを探す
  • ビジネスにつながる気づきを得る

このステップで重要な点は、目標が何であれそれを具体的にして、成功とはどのような状態かを決めておくことです。

ベースラインの設定

ROIを測定するためには、ベースラインとの比較が欠かせません。ベースラインと目標を設定し、現状をメトリクスなどの数値として記録することで、現在の進捗を把握することができるからです。これは、Excelやスプレッドシートなど、どの組織でも使用しているツールで行うことができます。

たとえば、フォロワー数の増加が目標の場合、ベースライン(目標設定時のフォロワー数など)、目標数、現在の数が分かれば、現状を把握することができます。さらに、過去1か月などの期間で新たに獲得したフォロワー数も分かれば、あとどれぐらいで目標を達成できそうかという展望もつかめます。

このように、ソーシャル・アナリティクスは初めての人でも、ソーシャル・アナリティクス・ツールを持っていなくても簡単に始められます。ソーシャル・アナリティクス・ツールを使用している場合は、これまで収集したデータも考慮に入れ、より高度で複雑なメトリクスを用いてベースラインを設定してもよいでしょう。

ただし、ベースラインの設定に使用するセンチメント、情熱度、エンゲージメント、メンション数、フォロワー数などのメトリクスは、目標の設定や現状の把握には有効ですが、ソーシャル・アナリティクスの最終的な目標はビジネスゴールの達成です。その目標に対してどれだけのインパクトがあるかということも念頭に置きましょう。

背景を理解する

ソーシャル・アナリティクスの最終的な目的は、ビジネス全体を促進することです。そして、ROI測定の目的は、単にメトリクスの推移を確認するだけでなく、何が起きたことでどのような結果になったのかを考え、それを今後のマーケティングに活かすことです。そのため、ROIの測定において重要なのは「なぜこの変化が起こったのか?」を考えることです。

たとえば、より多くのインフルエンサーを特定することを目標にすると、ただ数値を追いかけるだけのゲームになってしまう可能性がありますが、この場合考えるべきことは、インフルエンサーがビジネスにどのような影響を与えたのかということです。それが分かれば、現状のまま進めていけばいいのか、うまくいっていない部分を変える必要があるのかが分かります。

グッチの例を見てみましょう。「ソーシャルメディア業界レポート2019:小売」では、グッチが顧客から高い人気を得ていることが分かりました。これは、グッチというブランドの排他性や信頼性によるものでもありますが、その他にも要因となる背景が2つありました。1つは、影響力のあるミュージシャンのおかげで「Gucci」という単語が「cool」や「awesome」と同義の単語として使用されるようになったからです。

もう1つは、K-pop(韓国のポップバンド)We are One EXO の Kai Kim が #Guccicruise ファッションショーのモデルとして起用されたためです。これにより、EXO のファンから多くのエンゲージメントを獲得し、ハッシュタグ「#gucci_kai」がトレンドになり、推定インプレッション数が急上昇しました。

ソーシャル分析のROIの一部としてGucci Kaiを測定する

このように、単に数値の増減だけを見るのではなく、その背景をよく考察しなければ、実際に何が起こっているかは理解できません。

これは長期的な例ですが、短期的な分析やリアルタイム分析でも同様です。リアルタイムデータを見て進行中のキャンペーンを評価するような場合にも、データの背景を理解することが重要です。UMG Nashvilleも、リアルタイム分析を使用してキャンペーン中に戦術を変更し、より良い結果を出しました(詳細はこちら)。

ブランドの評価を下げるような危機に直面したときも、背景の理解が重要になります。今日、危機予測能力はソーシャル・アナリティクスによってこれまでにないほど高まりまっています(少なくともNetBaseを使用している限り)。何かしらの原因でブランドに対するメンションやネガティブ指数が高まったとき、何が起きているのかを理解してすばやく適切に対処することができれば危機をチャンスに変えることができます。一方で、誤った対応や遅すぎる対応でブランドの評価が下落した場合、かなりの痛手となるでしょう。

Hotwire Globalは、リアルタイムの洞察を使用して現在発生しているトレンドを確認し、将来に向けたヒントを収集して、クライアントが今後の計画を立てるのに役立ちます

ROIを拡大する

ソーシャル・アナリティクスが会社やブランドにどれだけ貢献しているかを示すには、それだけの結果が必要です。インサイトの検出機能などを使用すれば、ソーシャル・アナリティクスは状況の把握だけでなく、売り上げやブランド価値の向上に直結する効果を生みます。

NetBaseでは、次世代AIを使用してトピックに関連するテーマを自動的に識別する機能を提供しています。あるトピックについてオンライン上での消費者の会話を分析するとき、この機能を使用すれば、どのような話題が関連して話されているかを自動的に分類することができます。また、この機能は人工知能によって自動的に行われるため、作業の手間が省けるだけでなく、分析者のバイアスがかかる心配もありません。

このような機能を利用すれば、たとえば企業側の認知度は低いが消費者の関心が高いニーズなども発見できる可能性があります。これによって発見したインサイトを実際にマーケティングに取り入れて成功したPopeyesの事例を見てみましょう。

Popeyesはもともと、夏にチキンサンドイッチの発売を促進するためテレビ広告を多く使用する予定でしたが、Twitterでチキンサンドイッチの宣伝を投稿するとまもなく「チキンサンドイッチ戦争」が始まり、これを検知したPopeyesはテレビ広告の出稿を中止しました。

広告を出さなかったにもかかわらず、2週間後には売り切れが続出し、チェーンはサンドイッチの販売を中止して商品を補充しなければならないほどの売れ行きとなりました。どうしてこのような結果になったのでしょうか?

その理由はTwitterでの投稿にあります。Popeyesは、競合である Chik-fil-A に向けてPopeyesのキャラクターらしい投稿を投げかけました。この投稿は、Popeyes発祥のアメリカ南部の特徴を反映したもので、ブランドを人間化するように、消費者がPopeyesに対して持っているイメージを上手く具現化したものでした。

Popeyesのソーシャル分析ROIは、新しいチキンサンドイッチについてツイートします

このツイートは、323,400件のいいね!と86,000件のリツイートを獲得し、さらに33億のツイートが続き、Popeyes のチキンサンドイッチは「話題の新商品」からオンラインおよびオフラインでの「現象」と言えるほど大きな反響をもたらしました。

Burger King と Popeyes の CEO である Fernando Machado は「だから、Popeyesがチキンサンドイッチの発売を再開した時も、TVでの広告は考えていなかった」「通常は多くのTV広告を出し、少しデジタル広告を出し、発売開始を強く打ち出すが、最も成功した事例では、テレビ広告の使用はゼロだった」と語っています。

また、彼は「私たちにとってチキンサンドイッチ戦争でのこれまでにないアプローチは、これからの販売方法を形作っていくのに役立つだろう」とも述べています。

このような場合、ソーシャル・アナリティクスによる売り上げやブランド価値への貢献度合い(ROI)は明確で、ソーシャル・アナリティクスを上手く活用すれば結果に大きな違いが生まれることがよくわかります。

途中経過を確認する

長期的に分析を行う場合、一定期間(四半期、半年、1年等)が経過したら、目標に対する進捗や、これまでを振り返って改善すべき点や気づきがあるか確認しましょう。たとえば次のような観点があります。

  • アプローチと結果のパターン
  • オーディエンスは誰か、属性に傾向はあるか
  • オーディエンスに対して適切なチャネルを使用しているか
  • キャンペーンは回を重ねるごとに改善されているか
  • 分析のよって得られた知見をマーケティングに活かせたか
  • 何がとくに結果に影響を与えたか
ROI測定の一部としてトップソースを理解する

これらの質問に対する答えがわからない場合は、ソーシャルリスニングツールを試してみましょう。ソーシャル・リスニング・ツールは知っておくべきことを明らかにしてくれます。あなたがやるべきことは、耳を傾けることだけです。

ただし、このような傾向がつかめたとしても、いつでも変動する可能性があることは念頭に置き、常にトレンドは確認するようにしましょう。

たとえば、昨年のホリデーシーズンのプロモーションを分析すると、Twitterが最適なチャネルという結果になるかもしれませんが、「back to school」というキーワードを分析したあるトピックにおいては、7月にかけてTwitterよりもInstagramでのやりとりが活発でした。オーディエンスをリアルタイムで分析しておけば、このようなトレンドの変化を察知し、マーケティングの方針を切り替えることもできます。

ROI分析の一部としてソーシャルメディア監査で人気のあるドメインを調査する

そのためにも、まずはソーシャル・リスニングを行ってオーディエンスを特定し、彼らのニーズやトレンド、適切なチャネルをリアルタイムでチェックしましょう。このようにしてソーシャル・アナリティクスを継続していけば、1年後の今頃にはROIに大きな改善が見られるでしょう。

ソーシャル分析のROI測定を通知する要約メトリック

ROIをわかりやすく示す

ソーシャル・アナリティクスの意義を理解してもらうためには、機能だけでなくPopeyes、UMG Nashville、Hotwireの事例のような結果が重要です。これまでのマーケティングを超えた明確な違いを示すことがきれば、ソーシャル・アナリティクスの効果を明確に伝えることができるでしょう。

データ分析の経験がない人にソーシャル・アナリティクスの効果を説明するときには、リアルタイム分析が役に立ちます。長期にわたるデータの分析と考察には知識や分析能力が必要ですが、リアルタイムで何が起こっているか見ることができるリアルタイム分析なら、データ分析の経験がない人にとってもデータが社会の変動を反映していることが分かりやすく、ソーシャル・アナリティクスの意味を実感しやすいでしょう。

リアルタイムのソーシャル分析ROIを理解するためのNetBase Quidで利用可能なダッシュボード

また、消費者の声を表すソーシャル・リスニングのデータと会社の売り上げデータを1か所に集めれば、マーケティングやトレンドと売り上げの関係を明確にすることができます。ソーシャル・アナリティクス・ツールを選ぶ際にはデータの統合できるかも確認したほうがいいでしょう。

ビジネスのどの領域においても、ソーシャル・アナリティクスは有益な情報になります。ここまで説明してきた点を意識して取り組めば、ソーシャル・アナリティクスのROIが課題になることはありません。

ソーシャル・アナリティクスについてもっと詳しく知りたい方や、ブランディングに課題を感じている方、ソーシャル・アナリティクスのツールでお困りの方はお気軽にご相談ください。

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