商品数を絞り消費者のニーズに応えるコロナ禍のブランド戦略とは?

by Kimberly Surico | 2020年7月27日|インサイト、マーケットインテリジェンス、トレンド
参照元: https://www.netbase.com/blog/fewer-choices/
本記事はNetBase Solutionsによって書かれた上記の記事を翻訳したものです。


これまで企業は、消費者のために様々な種類の商品を提供してきました。しかし、新型コロナウイルスの発生以降、各ブランドは消費者に提供する選択肢の削減を検討しています。トイレットペーパーから車まで幅広い商品を提供している各ブランドでは、必要不可欠ではないアイテムに時間やお金を割くよりも、工場や店舗の規模を縮小する傾向にあります。しかし、これらの商品がカットされたら、消費者はどのように思うのでしょうか。この記事では、各ブランドの方針や、それに対するソーシャルメディア上での消費者の反応をご紹介します。

その前に、このテーマに関連する統計をいくつかご紹介しておきましょう。

  • CPGの売上は2019年比で17%増加しています。
  • 不満を持っている顧客の96%は、ブランドに直接不満を伝えず、他の人に伝えるか、SNSなどで投稿しています。
  • 消費者の70%は、社会問題や環境問題に取り組んでいるブランドをサポートしたいと考えています。

CPG市場を見ていくと、これらの数字すべてが一体となって市場を変化させていることが分かります。

CPG市場の概要

多くの業種が新型コロナウイルスの影響で危機的な状況にある中、2020年6月の世帯CPGの売上は昨年6月よりも17%増加しました。また、アメリカでは3月中旬にCPGの売上が85億ドル増加しており、CPGブランドにとっては見逃せない機会となっています。

CPG市場に関するソーシャルメディア上での会話のクラスター分析を見ると、オーロラ・カンナビス(カナダ、医療用大麻の生産・販売会社)からクローガー(アメリカ、大手スーパーマーケットチェーン)まで、CPG市場には幅広い分野が含まれています。

cpg-conversation-supporting-fewer-choices

このうちのいくつかの項目をタイムラインビュー(下図)で見ると、これらのセグメントがどのように相互作用し、どのトピックがトレンドになっているかが分かります。パンデミック以前の2月から3月の間では 「CPG Brands」 、「CPG Enterprise」、「Sales and CPG Applications Market」が同程度の割合になっていますが、新型コロナウイルスの影響が大きかった時期は「CPG Brands」が多くの割合を占めています。

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ある研究でも、パンデミックの最盛期(3月22日〜6月30日)に最も好調だったのは冷凍肉、アルコール、冷凍食品だったことが分かっています。また、次のグラフを見ても美容関連が13%減少している一方で、冷凍肉は27%も増加していることが分かります。

毎日の支出グラフ

品揃えから価値へ

しかし、CPG市場も新型コロナウイルスの影響を受けなかったわけではありません。例えば食料品店では、6月の4週間に購入されたアイテムの種類は7.3%減少しており、Kraft HeinzCoca-ColaHershey などの企業は収益性の低い商品を削減し、人気のある商品だけにフォーカスすることを決めました。同様にBumblee Bee tunaも、より多くの缶を棚に置くために、フレーバー付きの商品を削減しています。

消費者が重要視しているもの

消費者の心理にどのような変化があったのか見てみましょう。

Quidを使用してブランドロイヤルティに関するソーシャルメディア上の投稿を分析すると、消費者のロイヤルティが変化していること、また、それに対応してブランドも同様に焦点をシフトしていることが分かります。

ブランドロイヤルティ-過去6か月-サポート-少ない選択

コロナ禍、ニーズを満たす新たな商品が既存の商品に匹敵するものであれば、消費者は他社の商品に乗り換えてしまうことが分かりました。また、MarksteinとCertus Insightsが発表した調査によれば、70%の消費者は、自分が使用している商品のブランドが社会問題や環境問題の改善のために取り組んでいるか知りたいと考えています。もちろんこれには、新型コロナウイルスに対するブランドの対応も含まれています。

下のグラフ「Covid Influence on Brand Loyalty」でも、新型コロナウイルスがブランドロイヤルティに影響を与えたことが示されています。

Covidのブランドロイヤルティへの影響

今日の企業はブランドパーセプションがすべてであり、前向きかつ信頼できる存在となる必要があるのです。

消費者の道徳心が競争の場を狭め、新型コロナウイルスも組み合わさることで、かつては必須と思われていたアイテムも今では時代遅れになっています。このような背景から、CPG企業は品揃えよりも提供する商品の価値を重視するようになっています。

ここからは、商品数を減らすことでメインの商品にフォーカスしているトップブランドの事例をご紹介します。

ハーレーダビッドソン

ハーレーダビッドソンは先月ディーラーに対して、今年の残りの期間は彼らのうち70%に追加のバイクを出荷しないことを発表しました。その代わりに彼らはベストセラー商品にフォーカスし、独占性を高めることを期待しています。

このブランドは過去数年間苦戦していました。そんな中、新しいデザインの商品は企業が売り上げを伸ばす手段の一つでしたが、新型コロナウイルスの影響で新たな商品のリリースは2021年に延期されています。

しかし、ソーシャルメディア上のデータを分析すると、消費者のブランドに対する愛着は以前と変わっていません。下のグラフでは、消費者の多くがポジティブなセンチメントを持っていることが分かります。

Harley-Davidson-consumer-sentiment-supporting-fewer-choices

ブランドに対して不満を持っている消費者のうち96%は、その不満をブランドに直接伝えず友人に話したりオンラインで投稿したりします。ソーシャル・リスニングはこのような潜在的な消費者の意見まで拾い上げることができます。 彼らがソーシャル・リスニングを活用して顧客を細かく分析し、このような方針を打ち出したとすれば、かなり賢い戦略でしょう。

Quilted Northern

新型コロナウイルスの発生以前もトイレットペーパーは必需品でしたが、パンデミック以降はわざわざトイレットペーパーの販売情報をTwitterで投稿する人がいるほど消費者にとって重要なものになりました。

新型コロナウイルスが拡大する初期の段階でQuilted Northernはトイレットペーパーの生産量を増やし、ダブルロールのみの生産に絞りました。最近では容量の多いトイレットペーパーの生産は続ける一方で、小さいロールの生産は中止することを発表しており、ソーシャルメディア上ではこれを賞賛する投稿が見られます。コロナ禍の消費者のニーズを理解し、商品のバラエティを絞り込んで重要な商品の生産にフォーカスしたことで、消費者からの支持が増えているのです。

キルト-北の消費者の投稿-サポート-少ない選択

同じようにレストランでも、人気のメニューを残してメニューの削減が行われています。

Outback・マクドナルド

Outback Steakhouseは、フレンチオニオンスープやウェッジサラダなどを廃止してメニューを40%削減し、スタンダードメニューや消費者から人気の高いメニューにフォーカスすることを決定しました。

消費者からもそれに賛同する意見が多く、例えばInstagramでは下のような投稿があり、消費者のOutbackに対するポジティブなセンチメントが読み取れます。

アウトバックステーキハウスオニオンリング

NetBaseを使用して、消費者がOutbackとともにどのようなブランドについて話しているか見てみましょう。下のワードクラウドはOutbackに関連した投稿の中で頻繁にメンションされているブランド名を表示したもので、Carrabba’s Italian Grill、Hooters、マクドナルドなどのブランド名が確認できます。

アウトバックステーキハウスワードクラウド

マクドナルドはクルーの削減と併せて、生産と消費者のニーズを満たすために、サラダやベーグルを含む何十ものアイテムを米国のメニューから除外することをフランチャイズのオーナーに伝えました。

ファストフード大手のこのような方針に対する消費者の考えを分析した結果が下の図です。このブランド情熱度インデックスでは、ここまで登場したブランドに対する消費者の情熱度を比較しており、経度と緯度の線はそれぞれ情熱度とセンチメントを、バブルの大きさは声のシェアを表しています。

マクドナルドの情熱度とセンチメントは両方とも安定しており、声のシェアは他の競合に対してかなり大きいことが分かります。ハーレーダビッドソンの声のシェアはマクドナルドに比べてかなり小さいですが、情熱度もセンチメントも高く、消費者から良い反応が得られていることが分かります。一方、Outbackはセンチメントの評価がいいものの、声のシェアは小さく、情熱度は他のブランドと比べてかなり低い結果になりました。Quilted Northernはマクドナルドやハーレーダビッドソンよりもセンチメントの評価が良く、情熱度もある程度あるため、今後声のシェアはより大きく、情熱度は高くなる可能性があるでしょう。現在の4ブランドの状況を全体的に見ると、Quilted Northernが最も良い位置にあると言えます。

ブランドパッションインデックス

先行き不透明な今、社会の変動に適応するためには市場の動向や消費者の声を理解して、適切な意思決定を下すことが不可欠です。ソーシャル・リスニングを活用すれば、手間も時間もかけずに重要な情報が得られ、迅速な意思決定が可能になります。ソーシャル・リスニングに関するご質問やNetBaseのデモをご希望の方はお気軽にご連絡ください。


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